貧血(鉄欠乏性貧血)

貧血(鉄欠乏性貧血)

貧血(鉄欠乏性貧血)

貧血にもさまざまな種類がありますが、最も一般的なのは、鉄欠乏性貧血です。不規則な生活や偏った食事、特に女性の場合は妊娠や授乳、月経過多などが原因で、体内の鉄が不足することによって貧血になります。その他にも、消化器系の病気や胃切除によって鉄の吸収が悪くなったり、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸がん、子宮筋腫や痔などによる慢性的な失血なども鉄欠乏性貧血の原因となります。また、激しいスポーツを習慣的にする人も、運動によって使う酸素量が増えるため、それだけ多くの鉄分が必要になり、鉄欠乏になることが多いです。

貧血の症状 

血中の鉄が不足すると、酸素を運ぶ大切な役割を果たすヘモグロビンが十分に生成されなくなるため、全身に酸素が十分に行き渡らなくなります。このため、疲れやすくなったり、顔色が悪くなったり、頭痛や肩こり、立ちくらみを起こしたり、記憶力や集中力が低下したり、イライラしやすくなります。また、口内炎や口角炎が出来たり、爪がスプーン状に反って変形することもあります。最近、物覚えが悪くなったとか、イライラしてストレスが溜まっていると感じていませんか?また、寝つきが悪くなったとか、食欲が落ちたと感じていませんか?異常に氷が食べたくなって、製表機の氷が空っぽになるまで食べ続けたりしていませんか?これは、鉄が欠乏することによって脳神経に異常をきたしている状態です。これらの症状に日常的に慣れてしまって、貧血だと思わない人が多いのですが、疑わしいと思ったら一度検査を受けてみましょう。

貧血の検査

血液検査で赤血球の数やヘモグロビンの値を測定します。正常なヘモグロビン量は、男性で13~17g/dl、女性で11~15g/dlです。

貧血の治療

鉄は体内で生成することはできないので、外部から摂取しなければなりません。食事から十分な鉄分が補充されれば一番良いですが、鉄欠乏性貧血の状態になってしまうと、食事だけで十分に補充することは困難なので、通常は鉄剤を1か月くらい服用します。鉄剤と一緒にビタミンCを飲むと、鉄の吸収が良くなります。反対に、コーヒーや緑茶に含まれるタンニンが鉄の吸収を妨げますので、出来るだけ控えるようにしましょう。鉄は半日以上かけてゆっくり吸収されていくので、鉄剤の服用前後だけコーヒーを控える程度では意味がありません。どうしてもコーヒーが飲みたい人は、就寝前に鉄剤を飲むのも手ですね。

また、鉄剤は他の薬と併用してはいけない場合がありますので、現在常用している薬がある人は、診察時に必ずお申し出下さい(例えば、テトラサイクリン系の抗生物質、ニューキノロン系の合成抗菌薬、甲状腺ホルモン剤など)。市販の鉄サプリメントを併用するのも避けましょう。

鉄剤を飲むと、大量の鉄が体内に放出されるため、一時的に消化器系に負担がかかります。このため、胃がムカムカしたり、便秘になったりすることがあります。もしこれらの症状が続くようなら、内服ではなく、点滴で投与することもできますのでご相談ください。鉄剤を服用している間は、便が黒くなることがありますが、通常は心配ありません。

貧血の予防

貧血予防のために、まずは食生活を見直しましょう。次のような食品には、鉄分が多く含まれるので、積極的に摂るようにしましょう。

  1. ヘム鉄(吸収されやすいタイプ)が多く含まれる食品
    1. 豚肉、牛肉、鶏肉などの肉類
    2. レバー
    3. 魚(いわし、かつお、まぐろなど)
  2. 非ヘム鉄(吸収されにくいタイプ)が多く含まれる食品
    1. 卵(卵黄)
    2. しじみ、あさりなどの貝類
    3. 大豆、あずき、とうふ、納豆などの豆類
    4. ホウレンソウ、小松菜、カブや大根の葉などの野菜
    5. ひじき、のりなどの海藻類

また、ビタミンB2、B6、B12やビタミンC、葉酸、銅なども鉄の吸収や血を作るのに欠かせない要素ですので、これらが多く含まれるフルーツや緑黄色野菜もいっしょに食べるようにしましょう。