嘔吐下痢症(おうとげりしょう)

嘔吐下痢症(おうとげりしょう)

嘔吐下痢症(おうとげりしょう)

ロタウィルスやノロウィルスなどのウィルスによって、激しい嘔吐や下痢を繰り返す急性胃腸炎です。ロタウィルスは、特に冬に流行することが多く、またノロウィルスによる感染もここ数年で増え続けています。乳幼児や高齢者が感染すると重症化する場合があるので注意しましょう。

主な感染経路と症状

感染した人から排出されたウィルスが、手や口に付着して経口感染します。家族の誰かが感染して、嘔吐物や排泄物を始末している時に、ウィルスが手に付着して2次感染したり、排出物で汚してしまったじゅうたんや布団などをきちんと殺菌消毒しなかったために、乾燥したウィルスが空気中に飛んで飛沫感染する場合もあります。また、ウィルスを含有した食品(カキなど)やウィルスのついた調理器具で調理されたものを食べても感染します。

はじめのうちはお腹の調子が悪くなり、やがて胃がムカムカしてきて激しく嘔吐し始めます。38度~39度の熱が出る場合もあります。また、水のようなサラサラした水様便を繰り返します。2~3日ほどすれば症状も収まり1週間くらいで良くなります。

主な治療方法

ウィルス性の胃腸炎なので、残念ながら抗生物質は効き目がありません。嘔吐や便でウィルスを体外へ排出することが必要なので、むやみに市販の下痢止めや吐き気止めを服用するのはやめましょう。
クリニックでは、患者さんの症状を見た上で、脱水症状や体力の低下を防ぐために、整腸剤や吐き気止め、高熱がある場合は解熱剤を処方します。薬を飲んでもすぐに吐いてしまう場合は、吐き止めの座薬などを使いながら嘔吐がおさまるのを待ちます。嘔吐や下痢が長引いてほとんど水分が取れない場合や薬が飲めない場合には、点滴で水分と栄養を補給します。

家庭でのケア

ご家庭では、体を冷やさないようにして、とにかく体を休めましょう。嘔吐が続く間は、刺激性の少ないイオン飲料(子供の場合は少し薄めて使用しましょう)などを常温で少量ずつ飲むようにしてください。水分さえ取れていれば無理に食べる必要はありません。オレンジジュースなどの柑橘系は吐き気を誘発するので避けましょう。

嘔吐が止まって、下痢の回数も減ってきたら、おかゆや柔らかく煮たうどん、柔らかく煮た野菜(かぼちゃ、大根など)、かれい・たらなどの脂肪分の少ない白身の魚などから少しずつ始めましょう。あまり無理をして量を増やそうとせず、弱った胃腸を少しの間休ませてあげるような気持ちで、約1週間かけて元の食事状態へ徐々に戻していきましょう。脂肪分や糖分、油分の高いもの、乳製品や繊維質のものは、下痢が改善されるまでは控えたほうがよいでしょう。

ロタウィルスやノロウィルスは一度かかっても免疫が付くことはなく、何度もかかる可能性があるので、家族への2次感染に気をつけなければなりません。感染した人の便からは、少なくとも1週間(場合によっては約1ヶ月)便中にウィルスが排出されますので、乳児のおむつ替えをした後や、嘔吐物の処理をした後は、手をよく洗って消毒しましょう。また、発症した人の周りにあるモノ、衣類にもウィルスが付着していて接触感染する可能性もありますので、しばらくの間はタオルの共有を避け、接触するモノはこまめに消毒(ミルトン、次亜塩素酸ナトリウムなど)するようにしましょう。
嘔吐した洗面器や床などは、キッチン用の漂白液(キッチンハイター等)を薄めて、拭き取って消毒します。布団は天日干し、布団乾燥機などを使って殺菌消毒しましょう。嘔吐物のついたタオル、ティッシュなどは、ビニール袋に入れてしっかり密封して廃棄しましょう。